投稿者: king-yoji

  • 5回目の『金閣寺』で気づいたこと

    今日は月に2〜3回の副業のため、京都に来ている。

    3連休最後の祝日だからだろうか、妙に電車内が混んでいる。

    そんな中、三島由紀夫の『金閣寺』を最初から読み始めた。

    もう5回目だろうか。はっきりとは覚えていない。

    「三島由紀夫の作品でどれが一番好きか」と問われれば、私の場合は『金閣寺』である。

    主人公の心の内が難解であるせいか、妙に魅力を感じ、何度読んでも飽きない。

    今回、特に気になったのが、脱走兵と有為子の話である。

    『春の雪』の清顕と聡子の場合に、少し似ているようにも思える。

    女性が美しいこと、妊娠していること、そして男性が死ぬこと。

    ただし、物語の内容は全く異なる。

    そもそも、脱走兵はなぜ脱走したのだろうか。有為子との関係が海軍の規律に違反していたのだろうか。

    憲兵、というより世間に二人の関係が知られてしまったことが、不幸な結末につながったようにも思える。

    そう考えると、清顕と聡子の場合は、二人の関係が世間に知られなくて本当によかった、と思ってしまう。

    有為子は、脱走兵の居場所を憲兵に教え、そこへ案内する。

    溝口はこれを脱走兵への「裏切り」と捉えている。

    しかし、脱走兵が憲兵に向かって発砲したことを考えると、有為子は憲兵が来ていることを脱走兵に知らせたのではないだろうか。これを溝口は「私を、われわれを裏切った」と表現している。

    有為子はまさか憲兵に発砲するとは思っていなかったのだろう、びっくりしてその場から走り出す。

    ところが、脱走兵は逃げる有為子を背後から撃ち、そして自らも命を絶つ。

    『金閣寺』は溝口の視点から語られる小説であり、有為子も決して好意的には描かれていない。

    そのためか、これまで私は、この結末にあまり同情できなかった。

    しかし今回、5回目にして、少し見方が変わった。

    溝口の視点から離れ、冷静に、もう少し客観的に考えてみると、これは実に悲しい話なのではないだろうか。

    何度も読んでいる作品なのに、今になってこんなことに気づく。

    だから『金閣寺』は、何度読んでも飽きないのかもしれない。

  • 車に何を求めるのか ― 40年近い車歴を振り返って

    車に興味を持ち始めたのは高校生の頃だった。

    当時は親戚で集まる機会が多く、年上のいとこたちがホンダのプレリュード、トヨタのクレスタ、日産のグロリアなどに乗っていた。いとこの友人が乗っていた改造されたマツダRX-7や、叔父のクラウンマジェスタにも魅了された。

    大学生になって運転免許を取得すると、まずは実家にあったMT仕様のトヨタ・コロナで運転技術を身につけた。その後、アルバイトで貯めたお金で日産パルサーを購入した。

    就職して2年ほど経った頃、MT仕様のトヨタ・チェイサーに乗り換えた。HKS関西に持ち込み、インタークーラーやコンピューターを交換。ブローオフバルブをバシュバシュと鳴らしながら走っていた。

    当時は、とにかく馬力に魅力を感じていた。

    そんなある日、職場の先輩が乗っていたスバル・レガシィB4に同乗する機会があった。

    交差点での右左折時に感じた低重心の安定感は、それまでの自分の車に対する価値観を変えるものだった。馬力ばかりを追い求めていたことを、少し反省した。

    そしてレガシィツーリングワゴンに乗り換えた。

    その後、雪国への転勤もあり、水平対向エンジン(BOXER)とAWDの組み合わせを存分に楽しんだ。

    ここまでは、すべて新車で購入していた。レガシィツーリングワゴンは約7万km走ったが、海外転勤が決まり、やむなく中古車買取業者に手放した。

    海外では経済的な余裕もなく、まず中古のトヨタ・カローラセダンを購入した。その後、子供の送り迎えなどで2台目が必要になり、帰国する日本人からマツダMPVを譲ってもらった。

    現地では走行距離10万kmの車にも十分な商品価値があり、新車を購入するという発想はあまり一般的ではなかった。

    この経験を通じて、中古車に対する偏見がなくなった。

    帰国後も経済的に余裕があったわけではなく、5年落ち、走行距離34,000kmのフォレスター CROSS SPORTS 2.0iを135万円で購入。再びスバリストとなった。

    その1年半後には、2年半落ち、走行距離19,000kmのレガシィB4 2.5i Lパッケージに193万円で乗り換えた。

    この車には8年弱乗った。

    そして次に選んだのが、4年落ち、走行距離28,000kmのWRX S4 2.0GT-S。購入価格は273万円だった。

    300馬力の走りは、やはり魅力的だった。

    このWRX S4に6年間乗り、走行距離は9万kmを超えた。

    今年の夏、10万kmを見据えた点検と整備を終え、あと2年は乗ろうと思っていた。しかし、ダンパーにオイルのにじみがあると指摘され、今後の高額な修理費用が頭をよぎった。

    そんなとき、何気なく見ていた中古車サイトで、好きな色のインプレッサを見つけた。

    ほとんど衝動的に乗り換えを決めた。

    購入したのは、2年弱落ち、走行距離約9,000kmのインプレッサST-H。価格は323万円だった。

    考えてみれば、私の車の走行距離の9割以上は通勤である。300馬力が必要な場面など、まずない。

    それどころか、パワーがあるとついスピードを出してしまうリスクもある。

    また、年齢を重ねたことや、奈良県の一般道路の路面状態があまり良くないこともあり、硬い足回りの車に少し疲れてきたというのも正直なところだ。

    今回の乗り換えで、車重は約40kg増え、エンジンの最高出力はほぼ半分になった。

    いわば牙を抜かれたような車になったわけだが、それなりに満足して乗っている。

    それにしても、車は高くなった。

    新車だけでなく、中古車も高い。維持費も決して安くない。

    街を見れば、ドイツ車やレクサスなどの高級車に加え、大きなSUVも数多く走っている。

    同年代の人たちは、どのような価値基準で車を選んでいるのだろうか。

    もちろん、今の車は昔に比べて燃費性能も安全性能も格段に向上した。快適性も高まっている。

    それでも、若い頃にプレリュードやRX-7を見て感じたような、胸が躍る感覚を、今の車にはなかなか抱けなくなっている。

    それは車そのものが変わったからなのか、それとも自分が年齢を重ねたからなのか。

    おそらく、その両方なのだろう。

    少し寂しい気もするが、今はインプレッサで毎日の通勤を快適にこなすことにも、それなりの満足を感じている。

  • 婚活

    先日Youtubeで、「倹者の流儀」くらまさんが婚活のため結婚相談所へ行った動画を興味深く視聴した。くらまさんは資産1億円を持つ高身長イケメンだが、結婚相談所の方からボロクソ言われながらも、現在の婚活事情、特に男性が不利となる理屈や高額である結婚相談所がそのコストに見合うだけの経済的合理性を含んだ優れた仕組みを持っていることを引き出しておられた。

    個人的にはとても面白くて勉強になったが、世間では炎上したらしく、続けて炎上についての謝罪動画まであげておられて、youtuberも大変だな、と思った次第で。

    恋愛や結婚ということを考えると、ふと「春の雪」が頭に浮かんだ。ここでの松枝清顕と綾倉聡子の「悲恋」には、現代で重視される合理性というものはほとんどなく、清顕は手に入らないものでないと情熱を持った行動ができない性分で、それに聡子が振り回された。どう考えても男性側に大きな問題があったと思われる。

    清顕にとって、肉体関係は得られたものの結婚できないことは自明であり、そのことでより熱量が増していき、最終的に出家した後の聡子にまさに命がけで会いに行くことを考えると愛していたことは間違いない。今では考えられないくらい、男性は不器用だったのだろうか。

    聡子においては何も悪いところはない。おそらくずっと清顕のことが好きで、そのサインを本人にも送り、手紙のことで一方的に連絡を断った清顕に、なんとかしようとあらゆる手を尽くし、絶望し、家のことも考えて仕方なく治典王殿下との結婚へと進んだ。

    その後の逢瀬の束の間の時間を、清顕と共に過ごしながら聡子はすべての運命を受け入れ、後悔もなく潔い。そしてその生き方は美しい。

    映画も拝見しているが、聡子は竹内結子さんが演じている。エンディング曲は宇多田ヒカルさん。「豊饒の海」が輪廻転生をテーマにしているため、清顕の人生に目が行きがちだが、聡子の方が長い人生を歩んでおり、三島由紀夫も我々に参考にしてほしかったのかもしれない。

    現在の結婚を考えている若者は「春の雪」をどう感じるんだろう。

  • ツアー試行

    昨日に妻に御同行いただき、ツアーの試行を行いました。

    まだまだ暑い気候でしたが、概ね問題なく完了しております。

    また新たな発見もあり、それはツアー当日のお楽しみということで。

    妻は「潮騒」しか読んでいない状況ではありますので、「豊饒の海」

    の内容は知りませんが、それなりに満足いただけたようです。

    相変わらず「高すぎるやろ」ということで、価格改訂することに

    しました。

    全行程で15,000から16,000歩となり、個人的にはウォーキングツアー

    でもあるのかな、と感じました。本来であれば、三輪山の登拝も

    ツアー内容に入れたいのですが、時間的な都合と、それなりの健脚が

    必要とされることから、別ツアーにしたいと考えています。

    ただ、現在募集中のツアー日程でも、参加者の希望が強ければ、

    事前に相談して登拝を組み込むことも考えたいと思います。

  • なぜ三島由紀夫のガイドを始めることになったのか

    高校生の頃、私は完全な理系でした。

    ブルーバックスを読むのが好きだった一方で、それと同じくらい文学

    作品も好きで、よく読んでいました。

    思うように成績が伸びなかったこともあり、最終的な進路を決める

    にあたっては、振り返ってみると文学作品から受けた影響もかなり

    大きかったように思います。

    就職してからは、ガムシャラに仕事に邁進しました。

    気がつけば25年ほどが経過し、ひょんなことから、また読書量が

    増えていきました。

    三島由紀夫については、中学生の頃に『仮面の告白』を手に取った

    記憶があります。

    もっとも、途中でギブアップしましたが。

    それから長い年月が経ち、ここ数年でいろいろな本を読むように

    なった頃、「三島由紀夫に、こんな長編小説があったのか」

    と興味を持ったのが『豊饒の海』でした。

    まず第一巻の『春の雪』を購入。

    ところが、文体が少し古く感じられたせいか、お恥ずかしい話、

    早々にギブアップしました。

    その後、数か月ほど別の本に「浮気」をしていましたが、

    「せっかく買ったのにもったいない。もう一度読んでみよう」

    と思い直し、かなり頑張って読み進めました。

    そして――

    「えっ、死んでもうた」

    あのときの衝撃は半端なかったです。

    そこから、三島由紀夫に取り憑かれてしまいました。

    作品を読むだけではなく、

    「三島は、この作品で何を言いたかったのだろう」

    と考えるようになりました。

    ところが、周囲には三島について語り合える人がほとんどいません。

    そんな中で『豊饒の海』を読み進めていると、私が生まれ育った

    奈良が、作品の中で重要な場所として登場します。

    それなら、

    「奈良に住んでいる私が案内する義務があるのではないか」

    と、勝手に思うようになりました。

    それが、このガイドを始めようと思ったきっかけです。

    先日、出来上がりつつあるホームページを妻に見せました。

    参加費を見た妻の第一声は、

    「高すぎやろ」

    でした。

    「いや、ChatGPTは1万円を勧めてきたし……。参加者一人でも催行

    するから……」

    などと言い訳している次第です。

    実際にどれだけの方が参加してくださるのかは、まだ分かりません。

    それでも、とにかく今、私が一番やってみたいことなのです。

    だから、まずは始めてみようと思います。